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2009.08.03 Monday ... - / -
#大発作―てんかんをめぐる家族の物語
評価:
ダビッド・ベー
明石書店
¥ 3,990
(2007-08)
『大発作 てんかんをめぐる家族の物語』ダビッド・ベー
「L'Ascension du Haut Mal」David.B
やっと読み終わりました。

これは著者であり物語の主人公でもあるダビッド・B(ピエール・フランソワ;通称ファフー)の己という存在を守るため戦いの記録であり、自分と表裏一体の存在であったてんかん持ちの兄、ジャン-クリストフ(通称:ティト)の存在を認め理解し受け入れる為の長く険しい愛憎に満ちた物語である。(下にはもう一人妹がいる。)

物語は二人が兄が最初の発作を起こした1964年、ティト7歳 ファフー5歳の頃から30年後に久しぶりに再会し、兄の容姿の変貌ぶりに驚くシーンから始まり、そこからこの家族のてんかんの兄を中心にした長く辛く苦しい出口のないトンネルのような日々がファフーの視点で描かれている。

前半の2/3は、兄の発作を直すために家族が奔走する様子と、てんかんと遺伝とは関係ないとはいえ、家系図を遡り、父方、母方それぞれの2〜3代前までたどってゆくこの一族の歴史の話。
やがて子供達は大学に入る年頃になり、ファフーはパリにでて一人暮らしを始め、「ダビッド」と名乗り遠回りをしながらBD(フランスの漫画)作家として生活する道を模索することになる。
この後半の1/3あたりからは、兄の話からやっと著者本人の話が中心となり読みやすくなるとともに、ここにきてやっと気付く事があった。
著者はこの物語の中で、子供の頃から親に甘える事もなく、恋愛をする事もなく、日々「兄」を愛憎に満ちた眼差しで観察する事に終始しているのだ。
それはおそらく著者自身がこの物語を書くことで気付いた事なのだろうけれど、彼にとって「兄」の存在がこれまでの人生の全てといっても過言ではなく、おそらく三人兄弟の真ん中であり、父をのぞけば唯一兄を力尽くでも押さえられる男であり、自分が一番の「兄」の理解者であるという自負と自分が「兄」を直してあげるという強い思いで自分自身を自ら縛っていたのだという事を。
この「男もしくは父性」の認識というものは、自らが後に恋人との間に子供を作ろうと不妊治療に通い、様々な検査を受けたりするあたりで、肉体的にももろくも崩れ去り、そこでまた肉体の中に潜む「兄」の面影を見つけることにも成るのだけれど。

自分ばかりが孤独な戦いを続けてきたと思いこんでいたダビッドが、兄もてんかんの発作を起こしている間、精神が不在だった分けではなく、彼もまた孤独な日々を送っていたのだと理解するのは、冒頭の久方ぶりの再会をして相手の容姿の変貌にすら目を背けていた自分を受け入れてからで、そして最後は原題の「L'Ascension du Haut Mal(「てんかんの昇天」とでも訳せばいいのか?)」の通り、馬に乗り二人して空高く舞い上がる…それは誰にでも訪れる死への旅であり、自分を受け入れることで自由になれるという暗示でもあるように思えた。

たぶん「兄」はもうこの世にいないのではないだろうか?あるいはホスピスのようなところへ入所していて、遠く離れて暮らしているのではないだろうか?
最後の6巻だけ出版されるまでに3年の空白があったし。
そう思えるエピローグでした。

この原題の「L'Ascension du Haut Mal(「てんかんの昇天」)」はおそらくダブルミーニングの様な気がする。ascentionにはキリストの昇天の意味もあるが、上昇や登るという意味もあり(ポジティブに使われるみたいだけど)haut malにも古くは「てんかん」の意味もあったけれど、単に大いなる災いのような意味にも取れるだろう。
物語の前半はてんかんもしくは大いなる災いという山を登り頂上(終わり)を目指す(登山しながら「大発作はまだか?」なんてコマがありましたね)、最後は天に召されるという意味合いなのかな?という感じを受けました。

前半の永遠に続くかと思われる家族の戦いは、当時のフランス及びヨーロッパのカルト的信仰の一面を知ることが出来、興味深くはあるものの、イラストの情報量の多さとあわせるとなかなか読みづらかった。
これは決して万人受けする物語ではないけれど、BDとしてこういう作品が存在するという事は興味深い。これだけ人々が悩む話をBD(バンド・デシネ/フレンチ・コミックス/フランスの漫画)として描き上げたその意志を支えたものは、最後まで描き上げなければ自分も前へ進めないし「大発作」の山頂にたどり着けないという思いだったのではないだろうか
山は登ればあとは下るだけ。そして登山家はまた次の山を目指せるのだから。

私は基本的にプリミティヴな表現が苦手なので、この絵がちょっとダメでした。他のダビッド・Bの作品は大丈夫だったけれど、これに関しては辛かったです。
それでも作品の完成度としては素晴らしいと思いました。
JUGEMテーマ:Bande Dessinee


2007.08.26 Sunday ... comments(0) / trackbacks(1)
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