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2009.08.03 Monday ... - / -
#『LE COMBAT ORDINAIRE(ありふれた戦い)』MANU LARCENET(マニュ・ラルスネ)
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『LE COMBAT ORDINAIRE(ありふれた戦い)』 (リンク先の画像の所をクリックすると、本文を少し読む事ができます)
MANU LARCENET (Manuさんのブログです。いろいろあって面白いです。トトロがすきなのね)

C'est l'histoire
d'un photographe fatigue.
d'une fille patiente,
d'horreures banales,
et d'un chat penible.

これはある疲れた写真家と、
辛抱強い娘と、
ありふれた憎悪と、
そして痛ましい猫の話である。

BDの背表紙に書かれているこの文が、このBDのすべてを物語っている。

//////////////////////////////////////////////////

そろそろ30に足がかかっているであろう写真家のマルコは、長年通っていた精神科のセラピーをやめる決心をした。その足で、パリ郊外に住む弟の家を訪ね、とりとめのない馬鹿話しとゲームとドラッグで子供の頃のように夜更かしをし、翌日は港町(おそらくはブルターニュ?)に住む両親をたずねた。
かつては高速道路を運転するのが怖くてたまらなかったが、セラピストに「棺桶にのって猛スピードで疾走するのと同じ事だから怖くて当たり前」といわれ、セラピーなんてバカバカしいと見切りをつけ、今は普通に運転できるようになった。

マルコは両親と、特に父親と上手くいっていない。どう接していいのかがよくわからないから、会うと考えただけで気がめいってしまうから、精神安定剤を飲んでから玄関をノックする。
庭で一日中、沖を通る船の行き来をながめている父親は、片目と足が不自由で、惚けが始まったかと思うようなドキッとする冗談を言ってはマルコを心底驚かせる。
母親はいつまでも彼を子供扱いし、子供の頃好きだった料理を作り、仕事の心配をし、お小遣いは足りているか?と帰り際まで聞いてくる。
そんな平凡そうな両親でも、戦争の話しとなると「話す事なんかまったくないよ!」と語りたがらない。

翌日、長いドライブを経て田舎にある自宅へもどると、待ちくたびれた愛猫:アドルフはご機嫌斜めで思いっきりマルコの顔を引っ掻き、外へと出かけてしまう。
仕事部屋に入り、壁いっぱいにはってあった仕事の写真(どうやら戦争報道カメラマンのようである)を全部剥がして袋に無造作にしまってしまう。
仕事も長期休暇と決め込んで田舎にこもって数ヶ月がすぎたものの、なかなか思い通りの写真はとれず、編集者からの仕事の誘いの電話もつれなく断ってしまう。
そして深夜に起こる発作。
いつ、どこで起こるか分からない、原因も不明のこの発作。
しかし名前を付けられずとも、それを受け入れともに生きていくと決めるとなんとなく安心するものである。

そんなある日、いつものように猫をつれて森の中を散歩しながら写真をとっていると、そこの所有者であるという感じの悪いドーベルマンを連れた男が現れ、アドルフが噛まれてしまう。
憤るマルコに対し、「ここは自分の私有地であるから勝手に入り込んできた方が悪い。次にみつけたらどうなるか責任はもてないぞ!」と恫喝する男。
すっかりパニックを起こし、逃げていったアドルフを探すマルコに、優しそうな老人が「この猫はあんたのかね?怪我をしとるみたいだから、医者に連れて行った方がいいんじゃないかね?」と猫を連れてきてくれた。
礼もそこそこに都心の獣医のところへ。
そこで出会ったかわいらしい女性の獣医:エミリーに一目惚れし、思わず「写真を一枚撮らせてください」と頼むマルコ。

それから数日後。過去の写真を整理してから写した写真はこれを入れて二枚だけ。
編集者からもクビを言い渡され、まったくいいことはない。
野原で一人怒りをぶちまけていると、アドアルフを助けてくれた老人があらわれる。
酒を勧められ、自己紹介するでもなくなんとなく止めたばかりの写真の仕事の事を自嘲気味に語るマルコに
「生まれ変わらなくてはいかんよ…」
老人の一言が胸に響く。
老人と別れて家へもどると、そこへはアドルフのその後の状態を心配してエミリーが訪ねてきていた。
少しずつ動き出すマルコの日々は…

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ここまでが前半部分で、この後エミリーと恋人同士になり、老人ともある種の友情のような関係を築き始めるマルコであったが、「ハリネズミの憂鬱」のようなマルコの精神構造は、誰かと親密になりたいと思ってもある一定のラインを超えると相手を傷つけてしまう。
エミリーと週末だけ一緒に暮らす日々が続き、「そろそろ一緒に暮らさない?」といわれただけで恐れおののき不機嫌になってしまう。
そして名前も過去もかたらず、写真を撮られる事もこばむ老人の過去が自分の父親と関係があり戦争とも関係があったと分かった時に、ついに押さえきれない怒りの感情が爆発し、すべてを壊してしまうマルコ。
他の人よりも繊細で、自我が強く、死という観念に対する恐れとともに死の風景に魅せられているような所もある。
セラピーに通い、時々発作も起こすが、決して特殊な人間の話ではなく、どこにでもいる普通の人間の話である。

最後に絵柄についてもふれると、一見シンプルな線で雑に描かれた絵のようにみえるけれど、実に表情豊かな、伝わってくる絵柄なのだ。
文字で受け取る情報もあるけれど、このBDは画面全体からうける印象と文章とのバランスがとてもよくて、絵(この場合、イラストの線だけでなく、色の使い方、構成などトータルな意味で)によって助けられる部分が非常に多い。
おそらく文章だけで読むと、それほどは感動しないかもしれないけれど、ゆっくりと画面の隅々まで眺めながら、時に前のページにもどったりしつつ読むと、作者の言わんとするニュアンスをしっかりと受け止める事ができるだろう。

なおタイトルは、とりあえず日本語に訳しましたが、読み終わった今でもこれと納得できる日本語がうかびませんので、(仮)という事で読んでおいてください。
これ、ぜひとも日本語に訳したいBDです。
なおこのシリーズは4巻まで出ているみたいです。

2008.03.27 Thursday ... comments(0) / trackbacks(1)
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